みんなが無事に帰り、
「あー、楽しかったですね」
と鍵をかけながら、真湖は言ったが、雅喜は無言だった。
「なんなんですか。
あんなに楽しそうだったのに」
人に伝わったかどうかはよくわからないが、この人にしては、とても楽しそうだった。
だが、雅喜はみんなが帰った途端に、機嫌が悪くなる。
「お前、俺がなにも見てなかったとでも思っているのか」
と言われ、ぎくりとした。
「羽村と外に出てただろう」
貴方、後ろに目があるんですか、と思ったが、どうやら、そこでなにがあったかまでは知らないようだった。
さすがに後ろに目はなかったようだ。
羽村の、沢田さんは彼氏に知られたくなくて、言いつけないタイプという言葉を今、まさに思い出していた。
「み、三上さんの話をしてただけですよ」
「浩太郎を格好いいとか言うし」
この人、仕事のとき、めちゃくちゃ細かいが、嫉妬するときも細かいのか? と思った。
「はいはい。
課長が一番格好いいですよ」
と言いながら、お風呂を入れに行く。
何故か、風呂場の戸口に立つ雅喜が、
「お前が消防士がいいと言うのなら、俺は消防士になろう」
と言ってきた。
「……酔ってますね。
っていうか、なんですか、その予言」
なにか壮大な物語が始まりそうですね、と言ってやった。



