課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 まあ、そりゃそうか。

 ちょっとは良識のある人でよかった、と思う。

 いや、この旅行に至る過程にお互いちょっと良識がなかったかもしれないが。

「荷物が多いのは、うちの母親だ」

 なにがあったのか、溜息まじりに言う雅喜に、やはり、マザコンか? とその顔を見ると、伝わったのか。

「この間、爺さんの傘寿の祝いで親族で旅行したんだ。
 大量の荷物を結局、俺が持たされて閉口した」
と言う。

「あ、そうですか」

 課長のお母さんかあ。

 男の子は母親に似るっていうし、きっとすごい美人で、上品な人なんだろうな、と思った。

 まあ、会う機会もないだろうけど。

 座席に着くと、雅喜は、さっと荷物を上げてくれた。
 実に自然に。

 その荷物を持たせる母親のしつけだろうかな、と思った。

 そして、いいと言うのに、雅喜は窓際の席を譲ってくれる。

「じゃあ、あとで交代しますね」
と座った真湖は、雅喜に言った。

「それにしても、課長はイギリス紳士のようですね」

「は?」

「いや、さっと荷物上げてくれたり、席を譲ってくれたり」

「……なんでイギリス紳士だ」