課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 真湖がそこで黙ると、羽村は笑う。

「やっぱり、沢田さんって、僕になんかされても、課長にはチクらないタイプ?
 すぐ言いつける女も居るけど。

 君は知られたくなくて、黙り込むタイプだね。

 そういうの、つけ込まれるからよくないよ」
と言ってくる。

「誰がつけ込むんですか」

「僕?」
 ははは、と羽村は笑う。

 何処まで本気なんだか、この人、と思っていた。

「いや、ほんとに。
 沢田さんは、一見、隙がないけど、一旦、親しくなると、隙がありすぎだよ。
 信用し過ぎるというか。

 だから、課長にもつけ込まれたんだよ」
と言ってくる。

 三上が立ち上がって、釣り竿を持ち、雅喜になにか言っていた。

 それを見ていた羽村は、手すりにすがったまま、振り返って、夜景を見る。

「……僕が悪かったのはわかってるんだよ。
 三上だけが悪いわけでもないことも。

 ちょっと彼女のことほったらかしにしてたからさ。

 三上が強引に誘ったわけでもない。
 彼女の方が三上を好きになったんだよ。

 でもだから余計にちょっとね。
 仲がいいだけに、あいつに負けた気がしたし。

 自分のせいもあるから、なにも言えないし。
 口に出せない分、いろいろと腹に溜まっちゃってさ」

 わだかまりだけが残った、と言う。