課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

『うちに代々伝わる指輪があるのよ。
 私はもう、つけないしね。

 貴女にあげるわ。
 これを婚約指輪として、とりあえず、つけて行きなさいよ』

 返事をする前に、雅喜が電話を取り上げる。

「そんな代々続く呪いの指輪みたいなのはいりません」

 あら、雅喜さん、あの指輪、幾らすると思ってるの、という声が聞こえたが、雅喜は、
「僕らで勝手に買いますから、ご心配なく」
と言って切ってしまった。

 まったく、とソファに座り、さっきのタブレットを見始める。

 真湖はソファの後ろに立ち、
「あの、課長。
 わざわざ買うのもなんですし。

 もし、お義母さまさえよろしければ、それをお借りしても」
と言った。

 なんだか、引っ込みがつかなくなる気がするし、それをはめたら、必ず結婚する呪いにかかりそうだが。

「いいんだ。
 俺が買う」

「え、でも。
 旅行代も出してもらってるままなのに」

「……もういいんじゃないか?」

「え?」

「出してもらってるとか、そういうの」

 いや、なんでもない、と雅喜は言った。