「どうした、沢田。
機嫌が悪いな」
夜、ソファで、昨日消してしまった宿を探していると、後ろから雅喜が言ってきた。
「いや~、羽村さんに淫乱とか言われちゃいましてね」
「……この世で一番お前から遠い言葉のような気がするが」
もう少しくらいそんな感じでもいいんだぞ、とわからないことを言い出す。
「で、なんで、羽村にそんなこと言われたんだ?」
と問われ、真湖は渋い顔をする。
「なんで、なにも言ってないのに、課長となにかあったとかわかるんですかね? あの人たちは」
なにやら礼子も気づいていたようだし、と思っていると、
「俺に訊くな」
と言ってくる。
そうだな。
この人、私以上の朴念仁だから。
なのに、自分の前に誰か居たんじゃないかと疑ってしまうのは、やっぱり、自分が課長のことをすごく格好いいとか思っちゃってるからなのだろうか。
タブレットを後ろから眺めている雅喜の顔を見ながら、真湖は思う。
まあ、少々気が短いことと、ぶっきらぼうなところを除けば、申し分ない人かな。
そのとき、ひょいと雅喜が後ろからタブレットを取った。
ふわっと雅喜の腕から風呂上がりのいい香りがして、どきりとしてしまう。



