課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

『支度は出来たか』

「いっ、今起きたところですっ」

 充分早いと思いますがっ、という言葉は、怒られそうなので飲み込んだ。

 出発前から揉めたくない。

『間に合いそうか』

「余裕です」

 自分で自分に、本当か? と突っ込みそうになったが。

 まだ入れるかどうしようか迷った荷物がキャリーケースの周りに溢れている。

『いや、間に合いそうにないのなら、車で迎えに回ろうかと思ったんだが』

「そんな滅相もないっ。

 って、あれ?
 課長、駅まで車なんですか?」

『そのつもりだが』

「えー。
 置いていきましょうよー。

 帰り新幹線で飲めないじゃないですかー」

『……お前、旅を骨の髄までしゃぶる気だな』

 もちろんですよっ、と真湖は拳を握り締める。

「行くからには楽しみましょう。
 ねっ、課長っ」

『お前……旅先でも、課長と呼ぶ気か?』