課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 


「おはようございますー」
と羽村の居る課に愛想よく行き、部長のところに物を持っていくと、周囲のおじさんたちに声をかけられた。

「おはよう、沢田さん。
 婚約おめでとう」

「おめでとう」

「ありがとうございます。
 でもまだ、婚約してませんから」
と笑顔で返していると、ぼそりと声がした。

「今日は随分スマートに流してるね」

 上着を脱いで仕事している羽村の背中が見えた。

 羽村のシャツからは、離れていても、ほんのり上品ないい香りがする。

 こちらを見ない羽村に、
「いや、過剰反応しない方が、さらっと流せるなと気づきまして。
 それにみなさん、祝福してくださってるわけですし」
と言うと、羽村は、椅子を回して振り向き、

「僕は全然祝福してないよ」
と子供のようなことを言ってくる。

 はいはい、と真湖はそれも流した。

「そういう諸々のお話は、今度ゆっくり聞きますから、いつがいいですか?
 うちで呑むの」

「……土曜なら暇だけど。
 三上がどうかな。

 あいつ、いつも予定のあるやつだから。

 まあ、『真湖りん』が誘えば、他は全部断るか」
と言って、鼻で笑う。

「あのー、三上さんと仲直りする気あります?」