課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「沢田」
「はい」

 雅喜はそこで少し考え、
「真湖」
と呼んだ。

 どきりとしてしまう。

 が、また間を置き、
「真湖りん」
と呼ぶ。

「そ、それはやめてください」
と言うと、

「いや、どれで呼ぼうかな、と考えてたんだが」
と言ってくる。

 雅喜は本気で悩んでいるようだった。

 寝そべって考え込んでいる彼の横顔を見ながら、
「沢田はちょっと職場で叱られてるときを思い出して、緊張するんですが」
と言うと、

「じゃあ、なにがいい?」
と訊いてくる。

「え、えーと。
 ……真湖?」

 言いながら、自分で照れてしまった。

「真湖」

「や、やっぱり、やめてくださいっ」
と言って真湖は布団に潜った。

 釣り大会のとき、なんの感慨もなく呼ばれたときはそうでもなかったのに、今、ちょっとやさしげな声で呼ばれると、心臓に悪い。

 会社で呼ばれたりしたら、動揺してしまう。

 ……いや、会社で呼ぶわけないか。