「お前は本当に往生際が悪いな」
家に帰って夕食を食べたあと、旅行雑誌を読みながら、雅喜はそんなことを言い出した。
「え?
どっちか決めないとこですか?
やっぱり、伊勢かなあって思ってますが」
と言うと、その話じゃないと言われる。
「俺と道後温泉を二人で歩きたいとか言っておいて、好きじゃないとか言う」
「好きじゃないとは言ってないですよ」
とソファでタブレットを見ていた真湖はすぐ下でラグに座っている雅喜を見る。
「よくわからないんですよ。
今まで誰も好きになったことがないから。
課長はそういう経験おありでしょうけど、私は全然なかったから」
と言うと、
「勝手にあると決めつけるな」
と言ってくる。
「ないんですか?」
「……ないとは言わないが」
やっぱ、あるんじゃないか、と思い、今、決めかけていて、雅喜に見せようとしていた宿のページを、えい、と閉じた。
あとでまた探して、苦労するのは自分だとわかっていて。



