課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 帰ろう、と雅喜が手を差し出してくる。

 なんとなく、指先だけ遠慮がちにつないでみた。

 草を踏んで車のところまで戻りながら真湖は言う。

「……課長」
「なんだ」

「私、本当は、課長と手をつないで歩きたかったんです。
 道後温泉を夜、歩いたとき」

 雅喜は黙って聞いている。

「課長は、浴衣で出歩くなって言うけど。
 私は、いつか、課長と二人で浴衣を着て、手をつないで歩いてみたいです」

 雅喜は足を止めた。

 こちらを見下ろしたあとで、もう一度キスしてくる。

 真湖はやはり、逃げずにそれを受け止めた。

「沢田」
「はい」

「……もう一度、訊いていいか。
 お前、俺のことが好きなのか?」

「いや……
 ちょっとわかりません」

 はは、と真湖は笑って誤魔化そうとした。

「あっ、課長っ。

 待ってください、課長っ。

 こんなところで置いていかれたら、凍死しちゃいますっ。
 課長〜っ」

 さっさと車に戻っていってしまう雅喜のあとを慌てて追いかけた。