課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「課長、なんでこんなとこ知ってるんですか?」

 雅喜はそこで溜息をつき、
「言ったろう。
 此処で花見が出来るんだ。

 春に親戚連中が此処で夜桜を見ると言って。

 またあの人たちは、我慢のきかない人たちだから、いろんなものを此処に持ち込みたがって、俺も運ばされたんだ。

 テーブルやらパラソルやら、冷蔵庫やら」

「冷蔵庫?」

「果ては、堀田さんまで連れてきて、此処で料理を作らせた」

 ははは……と真湖は笑う。

「なんだ?
 うちの親戚連中とは親戚になりたくないとか思ったか?」

「いえ、今更」

 あの雅喜の母親を見たのだ。
 そんなこと、既に予想済みだ。

 横に立つ雅喜を見上げ、
「訊いてみてよかったです」
と言うと、雅喜は、なんのことだ、という顔をする。

 でも、実際のところ、この年まで雅喜が誰とも付き合ったことがないなんてこと、ないような気がしている。

 いつかそんな話を聞いたら、ちょっとショックかも、とは思っていた。