課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 

「三上さーん。
 沢田さんー」
とデカイ声で島田が自分を呼んだ。

 沢田って……真湖りんか? と思いながら、三上は立ち上がる。

 社内に沢田はひとりではないが、今訪ねてきそうなのは、真湖だけだ。

 此処、此処と後ろを振り向きながら、島田は戸の陰を指差していた。

 どうやら、そこに真湖が隠れているらしい。

 まあ、無理もない。

 今は何処に行っても、課長の話を訊かれるだろうからな、と思いながら、入り口に行くと、真湖は本当にドアの陰に隠れていた。

 それ、廊下側からは丸見えなんだけど……と思ったが、必死な真湖が可愛かったので、突っ込まなかった。

「どうしたの、真湖りん。
 婚約おめでとう」
と言うと、

「三上さん、今、真湖りんやめて……」
 トラウマだから、と言ってくる。

「今、忙しいですか?」
と訊いてくるので、本当はちょっと忙しかったのだが、わざわざ真湖が来たのに、それも、こんなへんな体勢で、と思った三上は、

「いいよー」
とドアにすがるようにして、屁っ放り腰で立っている真湖に言った。

 それで隠れているつもりらしかった。