真湖は三上の居るフロアに寄ると、開いている扉の陰から中を覗いていた。
すると、後ろから、
「あれ? 沢田さん」
と声がする。
振り向くと、同期のやたら背の高い男、島田が立っていた。
「婚約おめでとう」
「なんで、島田くんまで〜っ」
っていうか、まだしてないしっ、と小声でわめくと、
「だって、もうみんな知ってるよ。
五嶋課長が沢田さん送り迎えしてるの知らない人の間では、あの課長と婚約するなんて誰なんだってすごい話題になってる」
と余計なことを教えてくれる。
広い社内だが、一足飛びに課長になった雅喜はやはり、注目されている存在なので、誰もが彼のことを知っているようだった。
「ああ、あの、総務の感じのいい子っておじさんたち言ってたよ。
日頃の行いがよくてよかったね」
と言ってくる。
「日頃往生ってこういうとき、言うんだっけ?」
「……違うよ。
それより、三上さん呼んで」
ええっ? もう浮気? と余計なことを言いながら島田は、中に入っていき、
「三上さーん。
沢田さんー」
とデカイ声で呼んでいた。
や……やめて、と思いながら、真湖はドアの陰に隠れる。



