課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 いやあ、別に課長は私と結婚したいわけじゃないと思いますけどね、と思ったとき、羽村が真湖の側の壁に手をついた。

 ひゃっ、と思わず、目を閉じて、身を引く。

「沢田さん。

 いや、真湖りん」

 いや……言い換えなくていいです。

 今、聞きたくないし、真湖りんって、と思ったのだが、羽村が大真面目な顔をして言っているので、口を挟むことも笑ってごまかすことも出来なかった。

「僕は諦めないからね」

「な、なにをですか?」

「真湖りんをだよ。
 課長にも三上にも渡さない」

 だから、何故、急にそんな展開に、と思いながら、羽村の大きな手と身体から逃げるように小さくなっているうちに、エレベーターが何処かの階に着いた。

 羽村は手を離し、何事もなかったかのように、扉の方を向いて立つ。

 乗ってきた営業の部長に、お疲れ様です、とにこやかに挨拶をしていた。

 この人、怖いよう、と思っている間に、部長は降りてしまった。

 真湖も頭を下げながらも、うーむ。一階しか下じゃないのに、エレベーターに乗ってるから、メタボで引っかかったのでは、と思っていたが、口に出すのも失礼かな、と思い、黙っていた。