課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜




 なにか今日はどっと疲れたな、と思いながら、エレベーターに乗った真湖は、すがるように階数ボタンを押した。

 婚約ね。

 婚約……

 するんだろうな。

 あの状態の雅喜に逆らえるとも思えない。

 毎日、送り迎えしてることも言われたんだろうしな。

 考えてみれば、いつかはこうならざるを得ないようなことをしてきたような。

 そんなことを考えていたら、エレベーターが止まって、羽村が乗ってきた。

「お、おはようございます」
と言ってしまったあとで、もう、おはようじゃおかしかったな、と思う。

 でも、人は、なんとなく、かしこまりたいときには、おはようございます、と言ってしまう。

 ございます、とつけられるからだろうか。

 こんにちはでございます。

 ふざけてるのかと言われそうだ。

 だから、芸能人とか、おはようございますって言うのかな。

 そんなことを考えている間、返事はなかった。

 ようやく口を開いた羽村は、
「課長はなかなか知能犯だね」
と言ってくる。

 知能犯?