課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 社食から出て、エレベーターを待っているとき、小声で雅喜が言ってきた。

「お前がしゃべったから、俺はうっかり、松山に行ったとか口を滑らせられなくなったじゃないか」

「課長、お土産代、半分出してくださいよ」

「なんでだ」

「だって、課長は買って来なくてよくなったじゃないですか」

 本当に出してもらおうと思っているわけではないが、いきなり文句を言ってこられたので、言ってみた。

「そりゃそうだ。
 二人で松山の土産買ってきたらおかしいだろ」

「いや、偶然同じ場所に旅に出たのかもしれません。

 前、部長が言ってたじゃないですか。
 嫌いな人と旅先でいつも遭遇する話。

 どんな遠方に行っても、向こう側からあいつが来るって」

「……お前、それは暗に俺が嫌いだと言ってるか」

 そうして、出会う可能性もあるということは。

「いや、だから、そんなこともあるって話ですよ」