課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜





 少し料理のレパートリーが増えた気がする。

 こいつと暮らすようになって、と思いながら、食べたあと、ラグの上で、必死に旅行雑誌とタブレットを見比べている真湖を見た。

 普通、一緒に暮らすと、女がそうなるんじゃないかな、と雅喜は溜息をつく。

「課長、課長、課長」
と真湖はタブレットを見たまま、腰でにじり寄ってくると、こちらを見ないままに手を叩いてくる。

「この宿、素敵です」
と見せてきた。

 ……楽しそうだな、沢田。

 なにがあったか、落ち込み気味だった真湖が元気になったので、まあ、よかったが。

「宮島にしたのか?」

 宮島の消えずの火がどうとか横に書いてある宿をを見せてくる真湖にそう問うと、
「まだ迷ってます。
 伊勢に行って、松坂牛も食べたいし」
と言ってくる。

「伊勢に行って、伊勢神宮じゃないのか」

「行きますよ、伊勢神宮。
 それで、赤福食べるんです」

 お前はなにをしに、伊勢神宮に行くつもりだ。

「楽しみですねっ、課長っ」
と真湖は曇りのない笑顔で言ってくる。

「まあ、旅は計画してる間も楽しいから、しばらく悩んでたらどうだ」
と言うと、はいっ、と言う。