下に下りたら、三上が廊下の窓辺で羽村と話していたので、真湖は、
「三上さん、まだ此処に居ますか?」
と訊いた。
「居るけど?」
「ちょっと待っててください」
と言って走って財布を取りに行こうとすると、
「お金ならいいよ。
いいってば、素直に奢られなよ。
真湖りん。
真湖りん、聞いてー」
と後ろから聞こえてきていた。
でもなんだか、奢ってもらいっぱなしも気持ち悪いので、数百円と言えど、返しておこうと、真湖は財布を取りに行った。
戻ってくると、羽村はもう居なかった。
「あれっ? 羽村さんは?」
と訊いたが、
「どっか行った」
と三上は端的な答えを返してくる。
いや、だから、突然何処に行ったのかと訊きたかったのだが。
まあ、いいか、と思った。
「そうですか。
これ、食券代です。
お釣りはいりません。
って、十円ですけどねー」
と笑ったが、
「もう〜、いいって真湖りん」
と返してくる。
いえいえ、そういうわけには、と押し返していると、
「お前ら、レジで揉めるおばちゃんか」
と言う声がした。
「課長っ」
と走って、そちらに行きそうになる。
いま、花田の話を聞いたばかりだったからだ。



