翌日、
「ねえねえ、真湖りん」
何故、みんな私を真湖りんと呼ぶ、と思いながら振り返ると、隣りの部署の三上領(みかみ りょう)が立っていた。
活動的なイケメンで、社内のイベント事では常に中心となって仕切っている男だ。
「真湖りん、週末、バーベキューなんだが、来るかい?」
と軽く訊いてくる。
「あー、週末出かけるんで」
すみません。
また今度誘ってください、と言うと、
「へー、誰と?」
と言ってくるので。
「友達と美術館に行くんです」
と答えた。
「そりゃまた高尚な趣味だね。
絵、なにが好きなの?」
と問われ、一瞬迷う。
旅行から帰ってきて、雅喜がうっかり、誰かにミュシャの話をしたらどうしようと思ったのだが、口ごもると、この鋭い先輩には気づかれそうなので、
「ミュシャですよ。
今、松山に来てるらしいので」
と言うと、へえ、と言う。
「遠いね。
そりゃ泊まりになるねー」
という特に意味のない会話をした。



