「課長ーっ。
起きてるんなら、開けてくださいーっ」
中から抑えた笑い声が聞こえてきていた。
雅喜が起きていると確信した真湖は扉を叩く。
そこで、ようやく雅喜の声がした。
「……合い言葉は?」
合い言葉?
「山?」
反射的に言ってしまうと、阿呆か、と聞こえた。
「俺が、山、と言ってから、川だろうが。
お前が、山と言ってどうする」
そ、そう言えばそうか、と思いながら、
「じゃあ、……真湖りん」
と、とりあえずの、本日のキーワード的なものを言うと、
「殺すぞ」
と言いながら、雅喜はドアを開けてきた。
真湖はほっとした顔で彼を見上げる。
思ったほど怒った顔はしていなかった。
「入れ」
と言われ、これ以上、雅喜の機嫌を損ねないよう、身構えながら、神妙な顔で入った。
雅喜は、まだ手にしていた本をベッドに伏せ、そこに腰掛ける。



