「あのー、私、単にアパートが焼けたから、此処に居るだけですからね」
雅喜がトイレに言っている隙に、真湖はそう言った。
雅喜が居るときに言うと、いろいろと口出してきそうで、厄介だからだ。
あの人、ときどき、とんでもないこと言い出すからな、と思っていた。
またまたー、と三上が笑う。
「幾ら困ってても、好きでもない男のところに泊まらないでしょ」
「いやー、それが成り行きというか」
「っていうか、好きでもない女を泊めないよね、普通」
「でも、課長は変わってるから」
まあ、確かに変わってはいるけど、と三上が同意したとき、雅喜が戻ってきた。
「あ、課長。
ご馳走様でした。
そろそろ帰ります」
と三上が言うと、雅喜は、いや、ご馳走様でしたって、お前が作ったんだろ、という顔をしていた。
「でも、三上さん、もう遅いですよ。
人んちですが、もう泊まっていかれたらどうですか?」
立ち上がった三上に、自分も立ち上がりながら真湖が言うと、
「いやいやー、なんか新婚家庭にお邪魔してるみたいで、緊張するから」
と言ってくる。



