「おはよう」
と給湯室に行くと、礼子が、
「あれー? どうしたの?
真湖りん。
ご機嫌じゃん?」
と言ってくる。
真湖りんってなんだ、と思いながらも、
「いや、別に」
と言うと、
「うそうそ。
なんかあったでしょー?」
と責めてくる。
……こいつ、無駄に鋭いな、と思っていた。
課長と一緒というのが、少々気が重いが、よく考えたら、旅行だ。
しかも、あんなすごい宿に。
返すとき、ボーナス結構吹っ飛ぶけど、一生に一度はあんなところに泊まってみるのも悪くない。
次に泊まれるのは、新婚旅行か、年をとってから行く定年後の旅行くらいだろうし。
機嫌良くお茶を煎れていると、
「……やっぱりなんかあるな」
と礼子と先輩たちが言っていたが、今は気にならなかった。



