真湖の方が先に降りてしまった。
誰も乗りそうにないので、雅喜はボタンを押して、早くに扉を閉める。
ひとり静かに考えていたかったからだ。
……なんなんだ、今のは。
『あのー、課長、もしや私のことがお好きですか?』
なにをどうして、そういう発想になったんだ。
真湖が思いつきそうにはないから、おそらく、清水たち女子社員の入れ知恵だろう。
暇なことだ、と思う。
そもそも本当にそうだったとして、俺がその場で、そうだと言うとでも思っているのか。
いや……、もちろん違うのだが。
ふと、自分が否定したあとの、真湖の嬉しそうな顔を思い出す。
あれは完全に、そんな厄介なことを言い出してくれなくてよかった、と思っている顔だった。
あいつは、きっと俺のことを釣り仲間か、呑み友達くらいに思っているに違いない。
ほっとしたような、ちょっと寂しいような……。
そんなことを考えているうちに、扉が開いた。



