課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「ちょっと急ぎの用事が出来たので、鍵はお預けしますから、ゆっくり見ていってください。
 お帰りの際に、事務所に戻してくだされば結構ですから。

 ああ、この鍵、新しく入られるときには、付け替えますから、ご心配なく」

 そう言って、じゃあ、と出て行ってしまう。

 三人で不動産屋に頭を下げた。

「遅くなってすまん」

「汗掻いてるね」
と真湖は見るからに体育会系な彼を見上げて笑う。

「うっかりうたた寝して遅れたんで、猛ダッシュで来たからな」
とぐい、と腕で額の汗をぬぐっていた。

 今日は休みのようで、自宅からランニングを兼ねて走ってきたらしい。

 ということは、此処の近くなのか。

 まあ、彼の母親の散歩コースらしいからな。

 おばさんたちはやたら歩いたりするから、どの程度近いのかはわからないが。

「真湖、どうだ、この部屋」

 幼馴染の彼は、すんなりと当然のように真湖と呼ぶ。

「うん。
 いいみたい」

 そう微笑んだ真湖の言葉にかぶせるように、

「いや、駄目だ」
と雅喜は言った。