課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜





「俺も行く」

 反射的に言ってしまった雅喜は、真湖の運転手を務めることになってしまった。

「真湖が課長を足に使ってる」
と笑う女子社員たちの声が聞こえた。

 まあ、人になんと思われようと、気にならないタチだからいいのだが。

 助手席に乗り込んだ真湖は、新しいアパートが少し楽しみらしく、機嫌がよかった。

 だいたいいつも機嫌のいい女だが。

「浩ちゃんのおばさん、卓球、強いんですよ〜」
と何故か幼馴染の母親の自慢話を始める。

 強いんだかなんだか知らないが。

 こんなときに、呑気に卓球行ってんなよ、とよそんちの母親によくわからない八つ当たりをしてしまう。

 いや、だからといって、その母親と真湖が親しくなられても困るのだが。

 ああ、もう親しいのか。

 うちの母親は親しみやすくはない人だし。

 ……沢田とは意外に気が合っているようだが。

 自分でも、何故そんなことにこだわるのかわからないことに、延々とこだわり、真湖の話に、ただ相槌を打っていた。