昼休み。
慌ただしくお茶を片付け、出て行こうとした真湖を、雅喜が廊下で呼び止めた。
「沢田。
待て」
何処へ行く、と言う。
「言いませんでしたっけ?
アパート見に行くって」
「ひとりでか」
「浩ちゃんが来てくれるらしいですよ。
おばさんは、今日は卓球だから」
そう言うと、雅喜は何故か、渋い顔をした。
「すみません。
急ぐので、じゃあ」
と行こうとすると、後ろから、
「俺も行く」
と声が聞こえた。
幻聴? と思いながら振り返ったが、雅喜は足を止め、こちらを見ていた。
どうも幻聴ではないようだ。
「なんでですか」
と問うと、彼は、
「なんとなくだ」
と言う。
なんとなくって……と思ったが、時間がない。
こんな目立つ廊下で揉めるのも嫌だし。
「じゃあ、課長、乗せてってください」
と真湖は腕時計を見ながら言った。
まだ給湯室の前に居た礼子たちが、
「真湖が課長を足に使ってる」
と笑っているのが少し聞こえた。
いや、使いたい足ではないんだが……。



