課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「しかし、この土日ですか?
 キャンセル料かかるじゃないですかっ」

 せこいこと言うなあ、と雅喜は言ったようだったが、こちらにも責任がある。

 半分は出さねばならないだろう。

 あまり思い返したくない記憶だが、あの絵の前で、雅喜のスマホをいじりながら、
『あっ。
 私、この宿、泊まってみたかったんですよーっ』
と言って高い宿をクリックしてしまった気がするのだ。

「すみません、課長。
 私が三分の二払います……」
と言うと、どうした、と言われる。

 雅喜の方が自分よりも更に記憶がないようだった。

 そこのところも覚えていないらしい。

 まあ、犯人は私だろうな、と思っていた。

 五嶋課長は、酔って浮かれて宿を頼んでしまうようなキャラではない。

『これ、キャンセル料だけでも、結構取られるぞ』

 っていうか、泊まったら、もっと取られます……。

 私の給料の半分は飛んで行く気がする、と思っていると、
『俺は土日は用はないんだ。
 行ってみるか、沢田』
と言い出した。

「はい?」