課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「いえ、別に」

 それにしても、人の車の匂いって、独特の匂いがあるよなーと思っていた。

 芳香剤など乗っていなくとも。

 嗅ぎ慣れない匂いだと緊張するな、と思いながら、欠伸をすると、
「なに会社行く前からダレてんだ」
と言われる。

「いや、あの……緊張しているつもりだったんですが」

 自分で思ってるほど、緊張していないのかな。

 そう思ったとき、人波が流れていっている場所が視界に入った。

 駅だ。

「あっ、駅通り過ぎたじゃないですかっ」
と振り返ると、

「どうしても乗りたきゃ、一駅前から乗れ。
 それか、ちょっと離れたところで降ろしてやるから、そこから歩いていけばいいだろ」
と言い出す。

 止めるのがめんどくさかったのだろうか。

 まだ寄り道していると間に合わないような時間ではないが、と思いながらも、
「わかりましたよ~」
と答える。

 まあ、実際、今更電車に乗るのもめんどくさい感じではあった。