課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

『実はいつも使うネットの旅行会社からメールが来たんだ。
 宿泊する宿の確認メールだった』

「あれ?
 課長、何処か旅行に行かれるんですか?」

 リフレッシュ休暇はまだ取る予定になかったと思うけど、と思っていると、
『行くらしいぞ、お前と』
と言ってくる。

「……はい?」

『何故だかわからないが、お前と旅行に行くらしい。
 一泊で』

「は?」

『そう書いてある』
と決定事項のように言ってくる。

「いやいやいや。
 ちょっと待ってくださいよ、なんですか、それ」

 だって、そう書いてあるんだ、と雅喜は繰り返す。

 自分でもよくわからないようだった。

『誰かの悪戯かと思ったんだが、俺のIDもパスワードも知るわけもないし』

「彼女にでも盗み見られたんじゃないですか?」

『なんで俺の彼女がお前との旅行を計画してくれるんだよ』
ともっともなことを言ってくる。

 そして、俺の彼女、という言い方にどきりとしてしまった。

 あまりにもすんなりとその言葉が出て来たので、本当に居るのかな、と思ったのだ。

 まあ、あれだけの男前だし、エリートだし、居ない方がおかしいのだが。