「どうぞ、真湖さん、この部屋をお使いになって」
響子は客間の障子を開けた。
は、ありがたき幸せ、と言いそうになる。
「あ、ありがとうございます。
あの、明日にはアパート探しますから」
と言うと、
「あら、焦って決めるのはよくないわよ」
と言われた。
「何処かうちの部屋、空いてなかったかしら」
と言い出す響子の言葉を、
うちの部屋ってなんですか。
もしや、アパートとかマンションとかお持ちなんですか。
いや、もう、そのくらいでは驚かないが、と思いながら聞いていた。
「真湖さん、今日はもうゆっくりして。
身体が冷えたのなら、お風呂もまだ入れますからね。
雅喜、案内してあげて」
はい、と雅喜が言い、
「じゃあ、ごゆっくり」
と響子は出て行った。
障子が閉まった途端、二人で、俯き、ふうー、と息を吐いていた。
彼女の足音が完全に遠ざかるのを待って、
「課長ーっ」
とさっきからやろうと思っていたことをやる。
そう。
雅喜のネクタイを締め上げることだ。



