課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「そうしましょう。
 真湖さん、お茶はいいわ。

 行きましょう」

「は、はい?」

 お湯、もう沸いてますけど、と思ったが、さすが雅喜の母親、人の話を聞いていない。

 立ち上がると、
「さあ、雅喜さん、戸締まりをして。
 真湖さんの荷物を持って差し上げて」
とさっさと指示を出してくる。

「あ、いえ。
 みな焼けてしまったので、荷物はほとんどないんです」

 昨日のホテルから持ってきた歯ブラシとブラシ。

 それとさっき買った、コンビニの化粧品と、明日の服くらいしかない。

 あー、あと、そこの食べ損ねたケーキか……、と恨みがましく、テーブルに置かれた食べかけのケーキを見つめる。

 さっきまで、課長の家なのに、結構くつろげていたのに。

 何故、実家まで行くことに……。

「お母さん、あの……」

 雅喜がなにか言ってくれようとしたようだが、ちらと見た母親の迫力に黙ってしまう。

「お前、今日は俺もあっちに泊まるから、諦めろ」
と小声で言ってくる。

「えーっ。
 そんなあ」

「明日には、新しいアパートが決まったって言えばいいだろ。
 ああ言い出したら、てこでも動かないぞ」

 俺が結婚するとか言ったから、お前がどんな女か見定めようと思ってるんだろ、と言う。