課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 な、何故、住んでるとわかるっ。
 それも今日からなのにっ。

「きょ、今日泊めていただいただけです。
 あの、昨夜、うちが火事になりまして」
と言うと、まあ、と言う。

 本当です、とその目を見ながら訴えた。

 言葉にならなかったのは、怖かったからだ。

 女同士なせいか、課長と同じあの瞳が十倍迫力を増して見える。

「あら、そうなの。
 でもまあ、嫁入り前の娘さんが男の家に泊まるというのもね」

 ご、ごもっともでございますっ、と身構えていると、
「そうだわ。
 貴女、うちへいらっしゃるといいわ」
と出来れば、耳を素通りして欲しい言葉が聞こえてきた。

 うちって……

 うち?

 課長の実家?

 この人の家?

 今、自分の前に突きつけられた現実を受け入れられず、心の中で何度も同じ事実を言い換えてみる。

 いっ、嫌ですっ、と雅喜を見たが、目をそらす。

 いや、課長っ。
 貴方、いつもバリバリ物事進めてくじゃないですかっ。

 なに逃げてんですかっ。

 帰ったまま、まだ着替えていなかった雅喜のネクタイを締め上げてやろうかと思った。