課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 だが、本当に本人からかかっているのなら、これ以上出なかったら、きっと殺される。

 真湖は仕方なく、はい、と出た。

『沢田』
と紛れもない雅喜の声がした。

 よく通る、部下を遠慮会釈なく叱り飛ばすのに適した声だ。

『何故、お前の番号が俺のスマホに登録されている』

 それは私のセリフですが、と思いながら、

「……ドッキリじゃないですかね?」
と、思わず、今、思っているままを言うと、

『誰が俺にドッキリを仕掛けるんだ。
 一般人の俺にドッキリを仕掛けて、誰が喜ぶんだ』
と言ってくる。

 電話の向こうから、自分ちのテレビと同時に笑い声が聞こえてきた。

 どうやら、同じ番組を見ているらしい。

「課長、ドッキリとか見るんですね」
と言うと、今、その話をしてるんじゃないだろう、と叱られた。

「それにしても、よく、私の番号が登録されているのがわかりましたね。

 私は、今、課長からかかるまで、課長の番号が登録されていることに気がつきませんでしたよ」
と言うと、

『お前のにも登録されてるのか』
と残念そうに言う。

 なんなんだ、と思った。