倉庫に行って、スチール棚を見ていると、それらしきバインダーがあった。
うう。
埃を被ってそうだ、と思いながら、手を伸ばすと、頭の上から違う手が伸びてきて、取ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
と振り返りながら、それが誰だか、真湖にはわかっていた。
背広の柄と香りに覚えがあったからだ。
ほら、と自分が取ってこいと言ったバインダーを雅喜が渡してくれる。
「で?
家が火事になって、どうなった?」
と訊いてくる。
それが訊きたくて、此処に来させたようだった。
「今、近くのホテルに泊まってるんですよ」
ふーん、と雅喜は軽い調子で言った。
「どのみち、あのアパートはもう建て替えないそうなので、他所を探さないといけないんですけどね」
「で?」
「は?」
「その、浩ちゃんとやらは、何処から湧いてきたんだ」
たまたまその場に居合わせたのか? と言う。
「湧いてくるって。
浩ちゃん、消防士ですからね。
私より先に居ましたよ」
消防士か、と雅喜は呟く。



