「課長、私、焼き鳥と言った気がするんですが」
此処、炉端焼きじゃないですか、と文句を言うと、
「鶏もあるぞ」
と言われる。
……ま、確かに。
「っていうか、お前、俺より頼んだろ、今」
「だって、なんか浮かれませんか?
こういうところに来ると」
色とりどりの食材が目の前に並んでいるのを見ると、誰でも気分が高揚してくることだろう。
「あっ、あと、ハマグリのバター焼きと、とうもろこしと……海老もいいですねえっ」
思わず、腰を浮かして、食材を見ながら言うと、
「炉端焼きで良かっただろ?」
と確認するように言われた。
……はい、と苦笑いしながら、腰を落とす。
おまけに板前さんたちの後ろに並んでいる酒も素晴らしいな、と思って眺めていると、
「そうだ。
雅喜さん、いい酒入りましたよ」
と店主がこちらを向いて言った。
「あれ?
よく来られる店なんですか?」
と雅喜を振り返る。
「子供の頃からですよ」
と笑って店主が言う。
なるほど。
それで、雅喜さん、か。



