甘く苦い、毒牙に蝕まれて






「近藤……お前が多崎の財布を盗ったのは、事実なのか?」


職員室で先生は少し面倒くさそうにそう聞いてきた。



僕の話、聞く気がないんだな。




「……事実じゃないです。盗ってません」


「そうか」


「もう戻っていいですか……」



早く、まひろちゃんの所へ……。




「とにかく多崎には、謝っておきなさい。事を大きくしたくないだろ」


「は?」


「それと、お前はもう少し人と関わった方がいいぞ」


「……」


「いっつもいっつも教室の隅で1人で本読んでばかり。もっと友達を作る努力をしたらどうだ?」



何で僕が謝んの?

しかもその話、今は関係ないし。