甘く苦い、毒牙に蝕まれて





こんな時……まひろちゃんがいてくれたら。


まひろちゃんなら絶対に僕を信じてくれるのに。




―ガラッ



「授業始めるぞー。みんな早く席につけー」


教室に入ってきた先生はただならぬ空気を感じたのか「どうした?何かあったのか?」と言った。




「先生!近藤くんが、多崎くんの財布を盗ったんです!」


多崎の友達が大きな声でそう言った。



先生はチラッと僕を見た後、



「近藤、昼休み、職員室に来なさい」
とだけ言った。