甘く苦い、毒牙に蝕まれて






「ちょっと男子~。なーに揉めてんの~?」


「あいつが、多崎の財布盗ったんだよ!」


「えー、マジで?」


「つーかあいつ、誰だっけ」


「近藤真守だよ。暗いし、存在感のない、幽霊みたいな奴だよ」




何で、こんな事に。


僕は何もしてない。

こんなのただの濡れ衣。




「違うっ!!こいつの財布なんか盗ってない!!」


潔白を証明しようとした。
けど、すぐ諦めた。
無駄だって気づいたから。



クラスの奴ら全員が、僕を冷たい目で見ていたから。