震えるくらい、深く息を吐いて。 あたりをほんのり白く染めて。 ポケットからスマホを取り出した。 歩きながら、冷たくなったスマホを耳に当てる。 規則的な電子音の後。 『──おー、何の用だよ?』 心地いい声が、鼓膜を揺らした。 ──なぜだかあの頃を、茜に助けを求めたあの頃を思い出してしまって、懐かしくて泣きそうになる。 「茜、」 『…ん』 「──私、もう、なんにも怖くないよ。 遅くなっちゃったけど、遠回りしたけど、もう私。 ──もう、大丈夫だよ」