「っつれいしまーーーす……あ。やべ」



ガチャ、とドアを開けてすぐ、俺は動きを止めた。


一葉にメロンパンが食べられていない心配するあまり、ノックするの忘れたからだ。



まっ、いっか。と顔を上げれば、理事長席に座るおばさんと、その横で汗をひたすらハンカチで拭いている校長が目に入った。





そして、俺はその理事長席の前に立つ制服を着た男2人に眉を顰めた。



……そういえば、放送されてたの、俺だけじゃなかったわ。



チラリとその男2人を見れば、1人は制服をカチッと着ていて眼鏡をかけた、すげー優等生っぽそうな奴で、呼び出されているのが正直、謎。



もう1人はそいつとはまさに正反対なチャラ男。茶髪でパーマなんてかけてるし、めっちゃ腰パンだし、ネクタイしてねーし、…てか、ワイシャツのバタン開けすぎだろ。


て、思ったけど、俺も大概だった。髪は黒髪短髪だけど、ワイシャツのボタン全部外してTシャツ着てるしー…、



無意識に観察をしていた俺は、「…揃ったわね」と静かな理事長の声にハッとして、前へと向き直った。



「さて、あなた達、自分がどうして呼び出されたか、わかっているかしら?」


歳のわりには化粧が濃く見える白髪の理事長にそう言われるが、


「知らねーし、俺早く帰りてーんだけど?」


俺は早くメロンパンが食いてーんだよ。せっかくの昼食タイムに呼び出しやがって。


それは、どうやら俺だけではないようで。


「理事長〜俺も早く帰りたいんだけど〜。エリカちゃん待たせちゃってるし〜」


チャラ男はそう言うと、スマホを取り出し、弄り始める。チラッと見えた画面には、とんでもない数の通知、……ほとんどが女だった。


驚きを通り越して、少し引いていると「理事長、」と優等生が口を開いた。



「失礼ながらこの時間は極めて無駄です。この時間を使い参考書の問題を解いて自分の知識を増やす方が断然良いに決まってます。それと、こんな奴らと僕を一緒の括りにしないでもらえますか」


優等生っぽい奴は、眼鏡をくいっと上げながら、俺とチャラ男を蔑んだ目で見てくる。


は、はぁ〜〜〜?!!なんだこいつ!!!


「わお〜辛辣〜」なんてチャラ男は笑っているが、俺は笑えねぇ!!


「てめぇ、もういっぺん言ってみろ!!」


俺が優等生の胸倉を掴もうとした瞬間だった。



「同じ括り?当たり前でしょう。あなた達は留年するのよ?りゅ・う・ね・ん」


ニコリと笑う理事長に、俺は、いや俺達はピシリと動きを止めた。


「はぁ?!」
「は?」
「え、まじ〜?」