お姫様のメランコリー






「では、私はE組で、皆さんとは棟が違うので。」


予鈴が鳴り、教室に戻ろうとすれば、理事長室を出てすぐの廊下で西園寺は俺達に綺麗にお辞儀をして去って行った。

何故だか、俺達3人は西園寺の消えていく背中に目が離せなくなった。



西園寺は感情が分からないと言った。


しかも、まるでそれが当たり前かのように……









「お前達、分かったと思うが、彼女を笑わせるのは容易ではない」

白鳥のこの言葉が合図かのように、俺達やっと自分達の教室に向けて足を進めた。


「……白鳥、お前、なんか知ってんだろ…?」

そして、俺は歩きながら白鳥に疑問をぶつける。


だっておかしいだろ。

今の言葉といい、白鳥のくせに西園寺によく話しかけるし、『生きてて、楽しいか』とか質問するし。


「俺もどうか〜ん。こういうのは共有してくれないとね〜」


鳴海がそう言えば、白鳥は素直に「そうだな…」と言い、少し言いにくそうに口を開いた。


「"敵を知り、己を知れば、百戦殆うからず"と思って、最初に理事長室に呼び出された日の後、彼女について調べたんだ」


ん?敵を知り、おのれをしればひゃくせ……?

まず最初に出てきた言葉の意味が分からず、首を傾げていれば、鳴海は「あ、いいよ。気にせず続けて」と白鳥に言った。

おいぃぃぃい!意味くらい教えてくれてもいいだろう?!





「……理事長の孫ってだけでは気が付かなかったが、」

本当に気にせず白鳥は話を進める。

てか、マジでさっきから言ってる意味がー…、


「彼女の父親は、白銀(しろがね)財閥現当主・白銀総一郎だ」