扉が開いて、入って来た女に俺は、いや、俺達は目を見開き、息を呑んだ。
「……っ!」
……確信する。
たぶん、ここにいる白鳥も鳴海も、俺と同じことを思っている。
ミルクティー色の軽くフェーブがかったふわふわの長い髪に、伏せる目に影ができるほどの綺麗に縁取られた長い睫毛。
鼻も唇も形が良く、肌はまるで消えてしまいそうなほど、白い。
………こんな美少女、見たことねぇ。
確かに、これは"人形みたい"だ。
理事長室の窓の光が西園寺姫乃を照らし、余計消えしまいそうな、
淡く儚げな雰囲気に、目を奪われる。
そして、そんな西園寺姫乃の伏せていた大きな目に捉えられた時、思わずゴクン、と喉を鳴らしてしまった。
その目は、何も映さない、光さえも遮断した底無し沼のような、
深く、黒い暗い瞳をしていた。
表情が無表情だから、そう見えるんじゃない。
『あの子に会えば…、私の言っていることがすぐに分かると思うわ』
理事長が言っていたことも、
"笑わない"ことも、
何もかも一瞬で理解できた。
……おい、誰だよ。笑わせるの楽勝とか思ってた奴。
たぶん、俺以外も思ってただろうけど、
これは一筋縄じゃいかなくねーか…?
少しずつ焦るのはきっと、
こんな無機質で冷たい目を、見たことがないからだ。



