♢♢♢恭弥side
「ねぇ、恭弥〜。なんか理事長室に呼び出されてたけど、大丈夫だったの?」
別棟にある空き教室。
乱れた服を整えながら振り向けば、乱れた服のままエリカちゃんは俺に抱きついてくる。
……やっぱいいよね。
女の子は柔らかいし、いい匂いするし。
「あ〜、なんかさ、色々と"おいた"してたのがバレちゃったみたいでさ〜。俺、もしかしたら留年かも〜」
ははっ、と笑いながら言えば、
「うっそ、留年?!…じゃあ、"あの先生"のこともバレちゃったんだ…?」
「………」
クスクスと笑うエリカちゃんから少し距離をとりながら、思わず俺の眉間に皺が寄る。
……本当、
俺だってバレるとは思わなかったよ。
ていうか、あのことは俺にとってはもう既に消したい過去のはずなんだけど。
「てか、さすがに留年は笑えな〜い!」
なんて言いながらエリカちゃんはまたもやケタケタと笑う。
そう、留年は笑えない。
けど、理事長から与えられた簡単すぎる条件に、普段から物事に対して楽観的に捉える俺は、笑うことができた。
孫を笑わせるっていうか、ようは楽しめさせればいいってことだろ?
めっちゃ簡単だし、女の子が相手ならちょー得意分野。
……まぁ、あのちょっと堅物そうな白鳥政宗くんと、お馬鹿さんな五十嵐律くんと協力プレイっていうのが面倒くさいところではあるけど〜。
「そうそう、エリカちゃんって理事長の孫のこと知ってる?俺らと同じ1年生みたいなんだけど」
理事長の孫がこの学園に通っているのは、噂では聞いたことがあるけど、女子に詳しい俺ですら実際に西園寺姫乃ちゃんには会ったことがない。
ただ、超絶美少女とは聞いたことがあって、会ってみたいなとはずっと思っていた。
理事長の話を思い出し、それとなくエリカちゃんに聞いてみれば、エリカちゃんはニヤリと笑った。
「恭弥、もしかして留年免れる為に理事長の孫にまで手出す気?」
「いやぁー…、そうじゃないけど、まぁ似たような感じ?」
一応、理事長公認だしな?
俺にとっては可愛い子と一緒にいれて、留年も免れて一石二鳥?
「あの女はやめといたほうがいいよ!何してもほーんと、無表情!絶対アレ不感症だよ、不感症っ!」
エリカちゃんのその言葉に、俺はピクリと反応をする。
無表情………
理事長が言っていた"笑わない"って本当だったのか…?
なんて考えていれば、「てか、エリカ。自分より可愛い女って嫌いなんだよね〜」エリカちゃんは服を整えると、すくっと立ち上がった。
「エリカも遊んでるのバレたらヤバいからちょっと控えよ〜っと!じゃあね、恭弥」
「うん、じゃあね〜」