「ソウ先輩〜!」

同じピッコロの2年生の後輩が駆け寄ってきた。

「ん?どうかした?」

今、ピッコロを担当しているのは各学年に1人ずついるが、コンクールに出られるのは1人だけだ。

3年生の私が1番経験も長く有利だが、もうこれが最後のチャンスになる。

後輩とはいえ、立派なライバルだ。

「ここのところの連符がどうしてもできないんです」

コンクールの自由曲の譜面を指差し真剣な表情だ。

一箇所つまずくだけでも、全体に影響が出てしまうのが演奏だ。焦る気持ちはよく分かる。

「ああ、ここ難しいよね。私も散々練習したよ」

「ですよね……何回やっても吹けなくて」

「ちょっと吹いてみて」

連符の少し前の小節を指差し促す。

「はい」

〜♪〜♪

彼女らしい、柔らかな音色が響く。

でも、やっぱり連符部分のリズムは若干崩れてしまっている。