「あとコンビニのコピー機占拠し過ぎても悪いし、場所移動したりしてまた時間がかかるかもだから、覚えておいてね」
早口で言うと、茅乃は「じゃ、わたしも戻るわ」とあっさり教室を出ていってしまった。
去り際、茅乃に励ますように肩を叩かれたけれど、複雑な気持ちになるだけだった。
茅乃がいなくなると、教室に静寂と気まずさが戻ってくる。
わたしが矢野くんをうかがうのと同時に、彼もこちらを見た。
「女子ってのは勢いがすげぇよな」と感心半分、あきれ半分のような声で言い、笑う。
茅乃は特にそういうところがあると思いながら、わたしも「そうだね」とうなずいた。
「まあでも、沢井はちがうか」
「え……」
「俺の知ってる女子はうるせーしワガママだしすぐスネるし、とにかく嵐みたいだと思ってんだけど。沢井はその真逆って感じ」
そう言った矢野くんの声は、責めているわけでも、バカにしているわけでも、あきれているわけでもないようだった。
そういう無色透明の響きをしていた。


