「いや、別に。HRの司会進行を、どうしたらスムーズにできるか話し合ってただけ」
そんなことを言った矢野くんを、まじまじと見てしまう。
するりと自然な言い訳が出てくるなんて、さすが矢野くんだ。
「へえ? 真面目だなあ、うちのクラス委員は。じゃあ僕もその話し合いに参加しようか」
のんびりそう言った先生に、さすがの矢野くんも顔が引きつっていく。
小森先生はうっかり者で頼りないところもあるけれど、いい先生なのだ。
いい先生なんだけど、今回ばかりは空気を読んでと叫びたい。
どうしよう、と頭を抱えたくなった時、茅乃を含めた女子が4人、教室に戻ってきたので驚いた。
たしか茅乃は写真の印刷班だったはずだけど、もう終わったんだろうか。
「あー! コモリンいた!」
「あたしたち探してたんだよぉ」
「え? 僕に何か用があった?」
みんな一斉に小森先生を取り囲むと、先生が途中だった掲示物の交換を、手分けしてさっさと済ましてしまう。


