対して矢野くんは、なかなか決まらない話し合いに飽き、「仕方ないからやってやるよ」と立候補をした。

その時も「さすが矢野!」「矢野なら安心だ」とみんなに喜ばれていた。


誰もが「誰かやってくんないかな~」と考えているのが明白な空気の中、手を挙げられる矢野くんをすごいと思った。

純粋に、尊敬している。憧れてもいる。


ただわたしは、彼のこともまた、苦手だった。



「……まじで言ってんの?」

「矢野が転校するって、本人が言ったのか?」

「さっき……職員室で小森先生と矢野が喋ってんの、聞いちゃったんだよ」

「まじかよ。転校って、いつ?」

「……明日」

「明日ぁ!?」


水を打ったような静けさから一転、ハチの巣をつついたような騒ぎになった。