放課後、キミとふたりきり。


気の置けない仲というのは彼らのような関係を言うんだろう。
「仲が良いよね。さすが親友」

「げっ。やめろよ、それ。女子ってそういう恥ずかしいこと、よく平気で言うよな。あんなのダチだよ。ただのダチ」

「でも、栄田くんは矢野くんのこといつも、マブダチって……」

「アイツほんとうぜぇ。あのバカの言うこと、いちいち間に受けなくていいから」



舌打ちでもしそうな顔でそう言った矢野くんだけれど、耳の端がほんのり赤くなっているのが見えてしまった。

素直じゃない。

不思議だ。さっきまではただ怖かった矢野くんが、いまはそれほど怖くない。

他に誰もいない場所でふたりきり、という状況がそうさせるんだろうか。
矢野くんの雰囲気が普段よりも柔らかい気がする。

そしてわたしの心にも少し、余裕のようなものが生まれていた。
これなら、なんとかなるかもしれない。

とりあえず、何もしゃべることができないまま終わる、という悲惨な結果にはならずにすみそうだ。