放課後、キミとふたりきり。


赤いハサミを受け取ると、矢野くんは刃のケースから引き抜き、指に通した。

確かめるように何度かハサミを開いたり閉じたりする。

彼の大きな手には小さいようで、少し窮屈そうだけれど、なんとか使えそうだ。



「沢井って、いつもハサミ持ってきてんの?」

「えっ。う、うん。何かと便利で。……変かな?」


ハサミを持ち歩いているのかと改めて聞かれると、なんだか危ない人と思われているようで気まずい。


「いや、別に。ただ、沢井のペンケースってでかいなと思って。ハサミ以外にも色々入ってんの?」

「あ、うん。ホッチキスとか、修正テープとか、フセンとか。ペンも色んな色のを持ってきてるから、好きに使ってね」


矢野くんの言う通り、わたしのペンケースはかなり大きい。
お弁当箱と同じくらいある。

ビニール製でシンプルだけど、軽くて丈夫だから中学の頃から愛用していた。


文房具が好きで、家にもたくさん揃っている。

新商品を見つけると、ついつい試しに買ってしまうのだ。