私が選び始めると、矢野くんは辺りをキョロキョロと見回して、近くにあった手帳の棚に手を伸ばしたりしていた。
傍に立ってジッと見られるよりはいいなと、少し肩の力が抜ける。
自分でも、ガチガチになっているなあと思った。
こんな調子で、矢野くんに転校のことを言わせるなんて、出来るんだろうか。
いやいや、いきなり弱気になっていちゃダメだ。
みんなLINEでアドバイスをくれるっていうし、がんばらないと。
だって、最後なんだから。
明日彼は、いなくなってしまうんだから。
教室から、矢野くんの姿だけが消えてしまう毎日がはじまる。
そう考えただけで胸がしめつけられ、泣きそうになった。
けれど、涙は我慢する。
泣くのはまだ早い。
それはこのミッションを成功させてからだ。
当たって砕けるくらいの気持ちで挑むんだ、わたし。
「あああああの! 矢野くん、これなんかどうですか!」
「あ。決まった?」


